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サックリとした食感に、ふんわり香るバターの匂い。スッキリした甘さのジャムと、軽く煎られた木ノ実。
「美味いか?」
そんなの、聞かれるまでもない!
無言でコクコク首肯くと、クツクツと静かな笑い声が聞こえて来る。
でも、そんなのに構っていられない。今は声を出す事すら憚られるのだから。
焼きたてのスコーン、マジ美味過ぎる!!
「気に入ったかい? まだ沢山あるから、ゆっくり食べなさい」
「セン、そろそろ次のも焼けたんじゃないか?」
どうやら、本当にまだ沢山あるらしい。焼きたてが!
庭の竈に向かうべく立ち上がるセン爺ちゃんとガット爺ちゃん。
先程、僕の為にわざわざお菓子を用意してくれた爺ちゃんズにお礼を言ったら、礼なら代わりに「お爺ちゃん」と呼ぶように言われた。
…それでお礼になるなら、別に良いけど…。
「ん?…セントーラ、客だぞ」
不意に、ジアがセン爺ちゃんを呼び止める。
玄関扉を見ても、人が来た様子は無い。先程“気配”がどうのと話していたし、姿が見えなくても、ジアには分かるって事だろう。
難しく考えても仕方ない、こういう時は魔法の言葉「だってファンタジー世界だから」で納得しよう。仕方ないよね!
「今日は客の多い日だな。珍しい」
セン爺ちゃんの言葉から、普段はあまり人が来ない事が察せられる。
「竈はワシが見て来よう」
「ああ、頼む」
庭に向かうガット爺ちゃんを見送り、セン爺ちゃんは玄関扉に向かう。
「で、客は誰だ?」
「すぐ来る」
? 誰だろう?
本当に直ぐ呼び鈴が鳴って、聞き覚えのある声が聞こえた。
「お~い、賢者の爺さん!生きてるか?」
「ギルマス、失礼ですよ! セントーラ殿、いらっしゃいますか?」
「騒がしいな。そんなに大声で呼ばずとも聞こえとる」
扉の外にいたのは、ギルドマスターのサンドスさんと、その補佐役であるナートラさんだった。
「本当に、今日は客の多い日だ」
「お? 他にも客が居んのか? って、ジアじゃねえか。お前がここいるなんて、珍しいな!お姫まで連れて…」
中に招き入れられたサンドスさんが、ジアの姿を見て目を丸くしている。
ジアは滅多にここに来ないのかな?
「で?何用だ?お前さん達がそろって来るとは、厄介事か?」
二人が席に着いて直ぐ、セン爺ちゃんが問う。
「御察しの通り。魔物の動きがおかしい。『賢者』の知恵を借りたい」
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