初めての一人旅

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「定員となりましたので、当『船』は出航致します。ご準備はよろしいでしょうか?」 不思議と近く聞こえたアナウンスに合わせて、目の前に《YES・NO》という表示が現れる。 最近、一般普及してよく見掛けるようになったこの“自律型ウィンドウシステム”は、色々なところから高い支持を受けているらしい。 だけど、僕は余り好きじゃない。急に目の前に現れるウィンドウに、ついビクッとしてしまう。 僕と違い向かいの席の少女は、とくに驚くこともなくウィンドウを操作している。 学校やスーパーなんかでも使われているので、慣れない僕の方がおかしいのだろう。 不思議そうにこちらを伺う少女に、慌てて僕も《YES》を押し込むと、『船』はゆっくり動き出した。 途端に、それまでただのテーブル席の様だった『船』は、シールドに覆われて『船本体』の中へと転移した。 船室の中、前方の大画面に今の『船』の様子が映し出されている。少々古い型のようだけど、外観を見るに思ったより大きいようだ。これから数日お世話になる『船』だから少し心配していたけど、これなら窮屈さを感じることも無いだろう。 「それでは、本船は只今より出航致します。快適な『異世界』旅行をお楽しみ下さい」 そうして、僕は初めての『異世界』へ旅立った。
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