砂漠の出逢い

2/3
1154人が本棚に入れています
本棚に追加
/213ページ
船は今、砂漠の上空を飛んでいる。 安価なプランだったので、船の行き先を自分では選べなかった。 でも『異世界』へ行ければ何処でも良かったので、特に文句はない。 僕には・・・。 「まだ砂漠なの?もういい加減飽きたんだけど!」 旅の道連れとなった少女は、口を尖らせて悪態をついていた。 昼過ぎに『異世界』の砂漠へとたどり着いてから、もう数時間『異世界渡航船』は砂漠の上空を飛び続けている。 地球よりも広いというこの『異世界』の広大な砂漠を、小さな船で渡るのは簡単な事ではない。 それでも、時折吹く強い風の影響で空からの『敵襲』が無いだけましなのだそうだ。場所によっては空を縄張りにする強い、所謂『モンスター』の襲撃がある為、大きな船や最新の強化船でしか行けない所もあるらしい。 この船は小さな旧型船なので、安全な場所のみ選んで渡って行くという。 割りとビビリな僕には安全地帯のみの航行は嬉しい事なのだけど、彼女には違ったらしくさっきから文句が尽きない。 「だいたい、さっきの街だってそんなに危険そうには見えなかったわよ?」 少し前に砂漠の街の近くを通り掛かった。近くと言っても、高性能な双眼鏡で街の全体像が見える程度の距離に寄っただけだ。 彼女にはそれも不満の種らしい。 「でも、あそこは『協定』のある街じゃないから」 『異世界協定』の結ばれた街でないと、渡航者の安全が保証されない。 異世界人の中にはかなり危険な人種もいるらしいから、安全性を考えれば迂闊に街に近付くことはできない。 「え~、護身用具も有るし、上を通るくらい大丈夫でしょ?あんな遠いんじゃせっかくの異世界が楽しめないじゃない!」 「でも・・・」 「あ~、早く砂漠エリアを抜けないかな~」 少女はただ不平を並べたいだけのようだ。僕の反論を聞く気はない様子で、そっぽを向いてしまった。 少女の相手に疲れた僕は、小さく溜息をついて船室を出た。
/213ページ

最初のコメントを投稿しよう!