僕らのヒーロー

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――生きる都市伝説なぁ。まあ、そうッスよね。あんなの見てたらなぁ。  そして。そんな彼女は、ただのお騒がせ娘ではないのだ。  この学校を仕切る不良グループ“蒼蓮華”の現リーダー。女性ながら、近隣の不良たちに一目置かれた存在が彼女なのである。それは、彼女の腕っぷしがすごいのもあるし――何より、この地域の治安維持に大きく貢献しているのもあるのだろう。  かつて荒れていた御花中。不良たちの巣窟だったこの学校をまとめあげ、平和をもたらしたのが先代蒼蓮華の総長だった。その人物にリーダーの座を譲られたアリシアは、女ながらに立派にチームを指揮している。不良抗争のチームでありなから、蒼蓮華とアリシアは断じて普通の少年少女達に手を出すことを許さないし、パシリやカツアゲなんて絶対しないのだ。だから、この学校の一般の生徒たちは多くが蒼蓮華に感謝しているのである。当時に、アリシアという人間の人徳も。  そう、非常に残念な性格でありながら彼女は――けして、それだけの人間ではないのである。 ――アリシアさんの手助けがしたくて、蒼蓮華のメンバーに入れて貰ったはいいけど。俺、結局役に立ててないんだよなぁ。  不良に眼をつけられ、パシリに使われていた幸児を助けたくれたのがアリシアだった。  屈強な男達に悠然と立ち向かい、拳一つで制圧してみせた彼女に――幸児はつい、一目惚れをしてしまったのである。我ながら単純だとは思う。確かに彼女は美人だし、戦う姿は本当に格好よかったけれど――不良グループのリーダーで、大の男をワンパンするような人間である。平和で平凡な学校生活を送りたいのなら、関わらない方が絶対いい人種なのは明白だった。頭が足らないと言われる幸児だってそれは最初からわかっていたのである。  それでもだ。――彼女を支えられる強い男になりたいと、そう思ってしまったのである。いつも笑顔で、人を助けることを厭わない正義感の強い彼女が。その強さゆえに、とても孤独に見えてしまったから。――ああよそう、恋の理由をどんな風に後付けしたって意味なんてない。結局恋は盲目。ただそれだけのことなのである。
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