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するとまた店のドアが開き、こいつの仲間かと思いきや、顔文字さんが先ほどとは打って変わった様子で店内に駆け込んできた。
顔文字さんは、僕らの状態を見てホッと安心したように胸を撫で下ろし、カラコロとこちらに近づいてくる。
そして僕と男の手からピストルを剥がし、それをそっと床に置き、僕の手のアイスピックをつんつん、と指さす。
素直に僕はそれを顔文字さんに渡すと、顔文字さんはなんの躊躇いもなくアイスピックの柄の部分で男の後頭部を殴打した。
「ぁぐっ」
小さなうめき声をあげた男は、そのまま力なく倒れ込む。
それを一瞥してから顔文字さんはそっと僕にアイスピックを返してくれ、寝転がった男を片手でひょいっと肩に担いで歩き出す。
数分前にそうしたように、カラコロとまた店のドアへと歩いていき、1度だけ振り返り、袖をヒラヒラ振って静かに店内を出た。
今度は僕も顔文字さんに手を振り返し、店内を振り返ってしおを確認する。
すると彼女はカウンターの足元に小さくなってうずくまり、こちらの様子を伺っていた。
しかしその頭上で彼女が入店時から持ってきていた、謎の重そうな荷物が辺りに散乱していた。
「………しお、これなぁに?」
「…っえ?…さ、差し入れのじゃがいもです…」
「またぁ?…僕まだ前貰った分残っとるんやけどなぁ…」
「しおを助けると思って貰ってよぉ!減らないんだもん!ほらっ、今回はオマケにきゅうりとトマトも!」
「僕お野菜食べられへんのやけど……」
先程の惨事など無かったかのような、間抜けな会話が店内に響いた。
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