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「顔文字さんって、男性なのかな…女性なのかな…」
しおは、顔文字さんが消えていったドアを見つめながら小さく呟く。
それを一瞥しながら、せっかくなのでしおに1杯ドリンクを出そうと手元のグラスを手に取る。
「謎は多い方が楽しいやろ?」
「…確かに!ミステリアスだぁ…」
そういってカウンターに向き直り、肘をついて感心したような声を出すしお。
ただの一般人ではない彼女が、こんなにも多感で表情豊かで仕事が務まるのだろうかと思うが、誰よりも仕事が早くて人思いなのを知っているため、いつもイメージが食い違い混乱してしまう。
と、再びお店のドアが開く音がする。
そろそろ閉店時間やのにどうしたものか…と思った瞬間。
目の前のしおの肩を掴んで突き飛ばす。
「ぅきゃあっ?!!」
情けないような可愛らしいような呻き声をあげてしおは倒れた。
声色からすると大した怪我もしてなさそうだ。
そんなしおと僕の間をダァン!と銃弾が貫く。
店内にいた数人の客は、怯えて各々しゃがんで頭を隠す。
いきなり店内に現れた、ピストル所持の男は勢いよくこちらに間合いを詰めてくる。
それを一瞥して、目の前のアイスピックを手に取り、勢いをつけてヒラリとカウンターを飛び越え、すぐにしゃがみ込むと頭の上を銃弾が通り抜ける。
その勢いを殺さぬまま前に飛び出し、僕も男へと一気に近寄る。
銃口を向けられ引き金を引かれるまでに、片手のアイスピックをくるりと手で持て余す。
右手で男のピストルを持つ手を掴んで天井に向け、瞬間パァンパァン!と2発放たれる。
そのまま手を捻り男の上体にのしかかり、床に押し倒し左手に構えたアイスピックを喉元に差し向ける。
瞬間、ひっと情けない声を出したこの男を見下し、大きくため息をつく。
「今日はもう閉店時間なので、おかえり頂けますか……って言いたいところやけど…」
そこで区切り、ぐっと左手に力を入れアイスピックの切っ先が男の喉を少し押し潰す。
「まあ、ここまでされたら帰されへんよなぁ?」
そう言ってにっこり男に微笑むと、情けない表情で震え出す。
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