観察者Ａ

観察者A

「……なんだか、最近視線を感じる」

　甘乃川女子高校屋上、塔屋がそのまま部室になっている天文部は、昼休みに黒点観測を行っている。当番制で一日二人の当番になってはいるが、暇つぶしか、教室で弁当を食べるより気が楽なのか、当番以外の者が参加する事も多い。

　田辺夕乃は、部室の電気ポットでいれたインスタントコーヒーに牛乳を足して、カフェオレ風にしたマグカップ片手に、登校途中に買った『パンズラビリンス』のあんバタをかじってつぶやいた。

　時は二学期、夏休みの合宿を終えて、気心も知れた天文部一年は、無駄につるむほどに打ち解けていた。

「視線って、ここ屋上だよ？　教室ならわかるけど」

　野瀬礼音(のせれね)があたりを見回すようにして答えた。