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「いや、待ってよ。女性の権利を叫びながら、何でそんな子育てすらしない男の人を何故選んだの?文句をいうなら、もっとちゃんとした男の人を選べば良かったじゃない。あなたは彼の何を見て、子供を作ろうと思ったの?子育てに関知しない夫を選んだのはあなた自身だって言う事を忘れないで。と、いうか、実際父さんは多少は子育てに関しては多少なりとも面倒は見てくれていたよ。ただ、それに関して、あなただけが満足できてなかったっていうのが本当の所でしょ?」
僕の言い放った言葉に、彼女青ざめた顔をひきつらせている。
僕はひたすら止まらなくなった言葉を吐き出す。
「あなたは単純に、自分が選んだ道を許せなかっただけじゃない。なにか問題があれば、その都度話し合って解決していくのが夫婦でしょ?それすら出来ず離婚もせず、最終的にそれを父親や自分が生んだ子供に垂れ流してきた。自分が選んだくせに、それを納得出来ないからって自分の夫や子供に当てつけるのはもうやめにして欲しい。」
僕が言い終えると、彼女は相変わらず青ざめた顔で僕を見続けていた。
僕は基本的に母親に対して口答えをするタイプではなかった。それが余計に彼女が驚いた要因だろうなと、僕は予想していた。
早くコーヒーを注いでほしいと思う僕の気持ちとは裏腹に、彼女はコーヒーメイカーに手をかけたまま固まっていた。
「今までずっとそう思っていたの?」
彼女が先程のヒステリックな声とは違った声色で僕に問いかけた。
「思ってた。とりあえず、コーヒーだけでも注いでくれない。」
僕の一声で、母親は思い出したかのようにコーヒーをカップに注ぎ始めた。
母親が僕にコーヒーを差し出す。その手は心なしか震えていたように思える。
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