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ぽとぽと。
ぽとぽと。
頬が濡れた。
生温かい何かが滑り降りていった。
手に力が入らなくて、勇樹は僅かに顔を背ける。
ぽとぽと。
でも、おかしいな。
濡れたなんて、そんな感覚があるはずがないのに。
だって、僕は、青の中で。
静かに静かに、深く沈んで。
青に抱かれた身体に、頬に。
今更、濡れるだなんて。
ぽとぽと。
また、同じ感触。
おかしいな、と思いながら勇樹はぎゅっと目を瞑って。
それを、開いた。
ぽとぽと。
目に痛いほどの白い光。
その真ん中には確かに、彼女がいて。
大きな二つの目から、たくさんの青を落としていて。
ああ、とぼんやりと思ったんだ。
彼女はちゃんと、生きている、と。
僕もどうやら、生きている、と。
彼女の口から零れた声は、青に濡れた僕の名前だったから。
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