見つからない

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何気無くバックミラーに目をやる。 「……」 今日の私は、間が悪いらしい。 バックミラーに、毅彦さんと、あの女。 何か言い争っている感じだが…声は聞こえない。 早く出てしまえばいいのに。 私は、その光景に釘付けにされた。 女が毅彦さんの頬を平手打ちして…彼は、女の腕を取って、乱暴にキスをした。 …何やってんの? こんな所で、こんな時間に。 バカじゃないの? 何が一目惚れよ。 何が好きにさせてみせる、よ。 また、だ。 私は、大事だと思う人には裏切られる。 こんなもんなんだ。 不倫に純粋なものを求めた、私がバカだった。 ハンドルに寄りかかって、小さくため息をつく。 カナコとミナトは、後部座席で眠ってしまっていた。 …帰ろう。 エンジンをかけようと顔を上げると…そばに毅彦さんが立っていた。 「……」 目が、合った。 だけど、さっきの光景が私を萎えさせた。 もう、信用しない。 ゆっくりと視線を外して、車を発進させる。 男なんて。 みんな同じだ。 足を開く女がそこにいれば。 タケシも、毅彦さんも。 大嫌い。
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