みんな嫌い

2/16
1013人が本棚に入れています
本棚に追加
/372ページ
「ハル…大丈夫だから…」 タケシの言う『大丈夫』には、全然説得力はなかった。 そして私は思い出していた。 私の頭を撫でる、毅彦さんの包容力を。 なぜか、あの人の腕の中では安心できた。 抱かれてもいなかったのに…何かを信用できた。 その何かが、何かも分からないまま…終わってしまったけど。 今は自分が壊れるのが怖い。 そして翌日。 タケシは、車で一時間以上かかる場所の心療内科に、私を連れて行った。 どうして、こんなに遠く?と思ったけど… 世間体が気になるのだとすぐに気付いた。 教師の妻が、心を病んでるなんて…と、タケシと義母とで話し合ったに違いない。 「最近、何かショックを受けるような事がありましたか?」 父親よりも年上ぐらいの先生が、穏やかな口調で言った。 「ハル、何かあったか?」 「……あっても言えません。」 その言葉に、タケシと先生は顔を見合わせた。 「言えないか。じゃ、言いたくなったら話してください。夜は眠れますか?」 「…眠れますが、何時間かおきに目が覚めます。」 「食欲がないと書いてありますね。いつ頃からですか?」 眠くなった。 質問されるのは嫌いじゃなかったのに。 眠りたいと思ったら、自然とまぶたが閉じた。 目覚めると、私は病院のベッドの上で点滴を受けていた。 何の点滴?と思ったけど、栄養剤だった。 そばにタケシの姿はなく、それがまた…私をガッカリさせた。
/372ページ

最初のコメントを投稿しよう!