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「…ハル、最近何かいいことあった?」
サトシが私を見下ろしながら言った。
…いい事…
「どうして?」
サトシは動く事をやめない。
「二週間会わない内に、ますますきれいになってる。」
「…ありがと。」
いい事?
…しいて言えば、毅彦さんがライヴで私のために歌ってくれた事…かしら。
帰りの車の中で、つい口ずさんでしまうと、毅彦さんは少し嬉しそうに笑った。
「晴子、嬉しかったか?」
悔しいぐらい、毅彦さんは優しい笑顔だった。
信号が赤になって車が停まるたびにキスされた。
セックスができなくても…いいのかな?
なんて、私らしくない気持ちにもなった。
それほど、毅彦さんは私の体ではなく、私自身を見てくれてる気がしてしまったのだ。
…初めてだ。
体以外のものを求められるのは。
それは、私がバカにしていた事でもあるのだけど。
純粋な気持ちなんて、年を取るとなくなるんだと、ずっと思っていた。
だけど…今、こうやってサトシに抱かれながら、私は車での毅彦さんのキスを思い出して、胸ときめかせている。
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