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悪魔の棲む家
記念すべき退院の日。
その日は、あんなに嫌っていた実家に帰る日にもなった。
しかも、オマケ付きで。
そう。
タケシまでが、私の実家について来たのだ。
なんて物好きなんだろう。
「急に…何なの?」
久しぶりの娘夫婦に、母親は喜ぶどころか…狼狽えまくった。
そりゃそうだ。
娘である私でさえ、実家は何年ぶりだろう。
タケシにいたっては…顔も覚えられてない気がする。
「困るんだけど。」
ピシャリと言い放つ母。
…私には、母に歓迎されない理由がある。
「私達、離婚するから。」
「えっ…そんな…それで、おまえここに戻ってくる気?」
「…安心して、長居はしないから。数日だけお願いします。」
そう。
長居する気はない。
ここに戻る事があるなんて自分でも驚いたが、今は仕方ないとも思う。
…私に洋楽を教えてくれた兄は、部屋に閉じこもったままだが、私が帰った事は分かっているはず。
兄は悪魔だ。
家族を操ろうとする…
悪魔だ。
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