悪魔の棲む家

1/16
1005人が本棚に入れています
本棚に追加
/372ページ

悪魔の棲む家

記念すべき退院の日。 その日は、あんなに嫌っていた実家に帰る日にもなった。 しかも、オマケ付きで。 そう。 タケシまでが、私の実家について来たのだ。 なんて物好きなんだろう。 「急に…何なの?」 久しぶりの娘夫婦に、母親は喜ぶどころか…狼狽えまくった。 そりゃそうだ。 娘である私でさえ、実家は何年ぶりだろう。 タケシにいたっては…顔も覚えられてない気がする。 「困るんだけど。」 ピシャリと言い放つ母。 …私には、母に歓迎されない理由がある。 「私達、離婚するから。」 「えっ…そんな…それで、おまえここに戻ってくる気?」 「…安心して、長居はしないから。数日だけお願いします。」 そう。 長居する気はない。 ここに戻る事があるなんて自分でも驚いたが、今は仕方ないとも思う。 …私に洋楽を教えてくれた兄は、部屋に閉じこもったままだが、私が帰った事は分かっているはず。 兄は悪魔だ。 家族を操ろうとする… 悪魔だ。
/372ページ

最初のコメントを投稿しよう!