木村サイド

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「これは俺の親父の形見のお守りです。親父も俺と同じ仕事をしていましたが、去年病気で死にました」  田中はポケットからお守りを出して語り始めた。 「でも逆に考えてください。親父は爆弾では死ななかったんです。退職して病気になって死ぬまで生き抜きました。それも全てこの赤いお守りのおかげだと思いませんか?」  田中は覚悟を決めた顔をしてこう言った。 「親父ぃー!! 俺たちのことも守ってくれぇ!! 赤を切るぜぇ!!」 「止めろ馬鹿!!!」  俺は三度田中を殴りつけた。どうしてお前は赤に関する良いエピソード持ってんだよ。 「落ち着いて冷静に考えろ、田中。世の中のお守りは大体赤い色をしている。青いお守りなんて滅多に見かけない」  俺はゆっくりと息を吐いて田中を見つめる。もうこうなったら覚悟を決めるしか無い。 「俺には不思議と確信がある。青だ。青を切るのが正解なんだ」  最悪俺が犯人だとバレてもいい。死にたくないんだ俺は。でもできればバレたくない。 「じゃあ木村先輩には青に関する良いエピソードが……?」  ねぇよ!! 青に関する良いエピソードなんてねぇよ!! 馬鹿野郎、田中。今は別に良いエピソードの発表大会じゃねぇだろ。 「えーとアレだ。死んだ親父から聞いたんだが、海が青いのは空の青が反射してるからだって。だからこう、なんか青なんだ」  グダグダじゃねぇか。ねぇんだよ青に関するエピソードなんて。 「木村先輩のお父さん生きてるじゃないですか。この間、結婚式で会いましたよ」 「うるせーバーカ!! 今朝死んだんだよ!! いいから青切れコラ!!」  俺は田中から無理やり爆弾をひったくると青色の線を切った。
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