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瞳だけではない。このヘーゼルグリーンの瞳の持ち主は、カウンターに座っていてもそれとわかる小柄な体躯といい、その体に似合いの顎の小さな顔つきといい、口髭の旅人に比べてあまりに華奢であった。金褐色の髪はゆるやかな癖があり、いたずらっぽい雰囲気を作り上げ、カウンターに置かれた山高帽も、腰の回転式拳銃も、本当に彼の持ち物なのか疑わしい程である。一応、骨ばった手指は男らしいとは言えないまでも子どものそれではなく、年頃はどう見ても十代の、せいぜいが二十代前半であろう。なるほど外見だけを見比べれば、この青年が勝つとは万に一つも思えなかった。
だから、旅人は勝負を持ち掛けたのである。店内を見回して、場所に似合わぬ青二才が座っているのを発見し、からかってやろう、ついでに淋しい懐をあっためてやろうと卑小な頭で考えたのであった。
旅人が意外だったのは、青年が特に気負うでもなく平気な顔で勝負を受けたことと、決して少なくない人数が青年の勝利に金を賭けたことである。このとき旅人は気がつくべきであった。
彼らは知っていたのである。この酒の味も知らない子どものような青年が凄腕のガンマンだということを、知っていた。この青年は己の技量を無駄にひけらかしたりはしなかったが売られた喧嘩は買う性質で、今度のように実力よりも自信過剰が先行した旅人がこの青年にゲームを持ち掛け、返り討ちにあうこともしばしばであった。青年は近頃、住人たちにとっては親しい"金の生る木"であって、そう考えると、一番の卑怯者は住人たちの方かもしれない。
無論、そんなことを口髭の旅人は知らない。こんな子どもが魔法もイカサマもなしに自分に勝てるわけがない、何を落ち着き払っているのだ、という顔をして青年を睨みつけている。
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