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アルフィナはよくわからずに聞き返すだけだが、祖父母がまた目配せをした。ジェシーがさり気ない様子で二人のグラスに水を追加し、メアリーがトントールに自分の前にあったパンをすすめて、トントールが照れながら受け取っている。ディリンジャーはいつの間にかウイスキーを持ってきてグラスを傾けていた。  キッドがアルフィナの皿を取って、そこにオレンジを一切れ置いた。 「クリミットの(じじい)にせよ」 言いながら、今度はぶどうを一粒取った。 「おれにせよ」 人数を数えるのと一緒に次々にフルーツをのせていく。アルフィナはその手元とキッドの顔とを見比べていた。 「それからルルーナ。トントール。メアリー。DDに、それからママ。……多いな」 「あの、何がです」 「きみが初対面でいきなり信頼した人間の数だよ。なんといっても、おれとクリミットの爺を信じすぎている。ふつう、いきなりそんな怪しげな手配書渡されて、クルトペリオの酒場なんて危険な場所に来ない」 アルフィナにフルーツの盛り合わせを差し出して、キッドは空いた手を、今度はアルフィナの祖母に向けた。祖母がフルーツを遠慮すると首を傾けて席に座りなおす。 「ああ、クリミットってのは、きみが会ったって言う隣町の役所の爺さん。あれはとても信頼できる顔つきじゃないんでね。きみみたいな女の子が爺さんをそんな風に信じる根拠があるとしたら、魔法かなって思ったんだけれど」 自分もフルーツに手を伸ばしながら、気軽な調子でキッドは訊ねる。アルフィナはやはり困った様子で青年を見返した。     
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