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「あたしの魔法は、その……ほんの少し、お花を咲かせるだけです」 アルフィナは、やや恥ずかしそうに言った。魔法の花と言っても、色形を思い通りに操れるでもない、未完成で不安定なものである。だが、この能力がアルフィナという名の理由であった。彼女が今は亡き母の腹からこの世に生まれ落ちた日、母の枕元に飾ってあった蕾が愛らしい桃色の花をつけた。それを見た姉が八つ星(パバルツァ)花咲き星(アルトフィーレナ)を思い出し、妹にその名を贈ったのだそうである。 「あぁ、なるほど。それは素敵だね」 キッドが相変わらず食事を続けながら返事をした。アルフィナはやや不安そうにキッドを見ているが、恐らく、それは青年の返事に不足があったのではなく、自分の能力ではまったく姉の助けにはならないことを少女が思い出したためであろう。  キッドはそんな少女の顔から一度視線を外してパンの最後の一欠けらを口に入れた。 「それで?その花で、きみは占いでもするのかい?」 「占い?」     
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