2、消えない想い

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 彼の一途な想いを受けるのは夏海だけだと、それはずっと変わらないものだと思っていた。 「あのさ」  立ち止まった彼が、体ごとふりむいた。 「なに?」 「(れい)って呼んでいい?」  にっこり笑ってうなずく。嫌だなんでいうわけない。 「あたしも鈴城くんの名前、呼びたいな」  彼はむかし、明貴(あき)という自分の名前を女みたいだと嫌っていた。  でも、あたしは、あきちゃんと呼ぶことをただ1人許されている夏海がうらやましかった。   「いいよ」  鈴城明貴ははにかんだ顔でうなずいた。 「あきくん」 「澪」  呼び合ってみたら、なんか恥ずかしい。 「そ、そのうち慣れるよな」  明貴くんはそういったけど、あたしはこういうのも悪くないなって思ったんだよね。 「ね、あきくん」  ちょっとだけ身長差のある彼の耳に、つま先立ちで口を近づける。 「ずっと好きだったよ」 (完)
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