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1、消したい想い
もういいかげんあきらめなきゃって、何度思ったかわからない。
でも、彼を見るたび、胸がきゅっとしめつけられるように切ない気持ちになって、まだ好きだってことを思い知る。
「おはよう、高清水さん」
にっこり笑ってあいさつしてくれるその顔は、中学のころと変わりなく女の子みたい。
高校生になって身長が伸びたせいか、たいぶ男っぽさを増したけど、くっきりした二重まぶたの大きな目や、桃色のふっくらした唇は、かっこいいというより可愛いといった方がしっくりくる。肌だってうらやましいほど白くてきれいだ。
彼はかたくなに、あたしのことを名字で呼ぶ。
「おはよ」
最近は、なるべくそっけなくしている。
彼がけっして縮めるつもりのない距離から、さらに遠ざかるつもりで。
彼の横には、私と同じ制服を着たおとなっぽい女の子が立っている。
ちょっと日に焼けた手首にローズクオーツのブレスをはめて、さらさらの長い髪をなびかせ、こんもり盛り上がったバストにきゅっとくびれた腰。ばっちりアイメイクをきめた目元を、指先でつつくようにいじるしぐさが色っぽい。
「夏海、なんか眠そう」
「昨日あんまり寝てないんだよねー」
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