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彼女はぼやくように言いながら、あたしの隣にくる。
「彼氏さんと長電話でもしてたの?」
彼がどう思うか、なんてもう気にしないことにした。だから、そっちは見ない。
「はじめはね。でも結局会って話すことになってさぁ」
「なんだ、お泊りデートかよ。リア充め」
笑って彼女をなぐるまねをする。
「眠いから今日サボろって思ってたのに、あきちゃん迎えに来るから起こされちゃったよ」
「夏休み終わったばっかなのに、サボるとかだめだろ」
彼がまじめに言うのを、彼女は笑い飛ばした。
「南高とウチはちがうから」
思わず彼を見れば、困った顔をしている。ちょっと傷ついたような、そんな表情。
彼女とあたしが受験で落ちた高校に、彼は通っている。
私立のすべりどめ高校と、地域で2番目レベルの高校とでは、ランクの差がずいぶんある。たぶん、ずる休みの重みもちがうだろう。
「自虐ネタはやめよっか」
あたしは彼女の肩を抱いて、おふざけで泣きまねをした。
「そうね、澪。底辺高校でもたくましく生きていこうね!」
彼女もおふざけに乗っかって泣きまねをした後、大笑いして話題は終わった。
視線を感じてちらっと彼のほうを見ると、どういうつもりか、じっとあたしを見つめて、なにか言いたそうな顔をしていた。
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