1、消したい想い

2/4
前へ
/10ページ
次へ
 彼女はぼやくように言いながら、あたしの隣にくる。 「彼氏さんと長電話でもしてたの?」  彼がどう思うか、なんてもう気にしないことにした。だから、そっちは見ない。 「はじめはね。でも結局会って話すことになってさぁ」 「なんだ、お泊りデートかよ。リア充め」  笑って彼女をなぐるまねをする。 「眠いから今日サボろって思ってたのに、あきちゃん迎えに来るから起こされちゃったよ」 「夏休み終わったばっかなのに、サボるとかだめだろ」  彼がまじめに言うのを、彼女は笑い飛ばした。 「南高とウチはちがうから」  思わず彼を見れば、困った顔をしている。ちょっと傷ついたような、そんな表情。  彼女とあたしが受験で落ちた高校に、彼は通っている。  私立のすべりどめ高校と、地域で2番目レベルの高校とでは、ランクの差がずいぶんある。たぶん、ずる休みの重みもちがうだろう。 「自虐ネタはやめよっか」  あたしは彼女の肩を抱いて、おふざけで泣きまねをした。 「そうね、(れい)。底辺高校でもたくましく生きていこうね!」  彼女もおふざけに乗っかって泣きまねをした後、大笑いして話題は終わった。  視線を感じてちらっと彼のほうを見ると、どういうつもりか、じっとあたしを見つめて、なにか言いたそうな顔をしていた。     
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加