1、消したい想い

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 最近よくこういうふうに目が合うんだけど、別になにも言われないから、あたしもスルーする。どうせたいして意味なんかないと思うし、いちいちどきどきさせられるのもしゃくだ。  学校の話題のあと、彼の表情はかすかにくもったままで、それは電車に乗って高校のある駅でじゃあねと別れるまで消えなかった。  彼は、いつまでそうやって腫れものにふれるような感覚でいるんだろ?  それを知っているばっかりに、毎回こんなふうに場をおさめてしまうあたしも馬鹿だと思う。  彼女のために傷つく彼を救う、なんてホント馬鹿。  みかえりどころか、感謝もされないってのに。  彼の名前は鈴城(すずしろ)明貴(あき)。  彼女の名前は広瀬(ひろせ)夏海(なつみ)。  2人は幼なじみで、鈴城くんは昔から夏海ラブで有名だった。  あたしが中学で2人と同じクラスになった時にはもう、鈴城くんの目には夏海しか入ってなかった。  たまたま鈴城くんと隣の席になったことで、あたしは彼とちょっと親しくなって、可愛らしい顔と名前をうらやましいなと思った。それから、夏海をみつめる一途な様子に気がついて、けなげで愛しくて、なんだか応援したくなった。  その時はまだ恋愛の「好き」じゃなかったけど、アホな男子があたしが鈴城くんのことを好きだと勘違いしてからかったことが原因で、彼は口をきいてくれなくなった。     
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