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2、消えない想い
「高清水さん」
学校帰りの駅で、めずらしく鈴城くんに会った。部活をやってる彼は、帰宅部のあたしとは放課後のすごし方がちがう。
「今日は部活どうしたの?」
「休み。軽音楽部の部活って、もともと毎日じゃないから」
「へーそうなんだ」
なにげなく会話するふりは、慣れっこだけど簡単じゃない。
ならんで電車を待つ彼は、なぜか今日もなにか言いたそうにあたしの顔を見ている。
「軽音って聞くまで、鈴城くんってバスケ部なのかと思ってた。背ものびたし」
「え、そう?」
彼は今でこそ平均より身長が高いみたいだけど、中学のころは愛らしい童顔にぴったりのちびっこだった。
「でも、夏海もバスケなんかもうやってないもんね」
すこし嫌味のつもり。
鈴城くんの大好きな夏海は、中学時代バスケ部だった。だから彼もバスケ部で小さいなりに頑張ってたのに、彼女の好みのタイプは文系男子で……だから、高校生になった彼は軽音楽部に入ったんだと思う。
けなげ、というより痛々しい努力だ。
だって夏海は、彼のことを「タイプじゃない」とあっさり言うから。
彼を選ぶことなんか絶対ありえないんだって。
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