2、消えない想い

5/6
前へ
/10ページ
次へ
「あたしも、うれしい」  小さい声でそういったとき、まわりから拍手がおこった。 「おめでとー」  同じ車両にのっていたひとたちが、あたしたちを祝福してくれている……! 「よかったね!」  ほとんどが知らないひとだったけど、何人かは見知った顔だ。  中学の同級生も、よく見たら数人いるし! 「澪ちゃん、おめでとう!」 「幸せにしてもらうんだよ!」  ひやかすような声が飛んでくる。  恥ずかしい!!!!!  あたしは顔から火が出そうになった。  鈴城くんをちらっと見れば、彼も真っ赤な顔をしている。 「ごめん、まわり見えてなかった」  ささやくようにそう言うと、彼はあたしの手をひいて移動をはじめた。前の車両にいくつもりらしい。  ひゅーっと盛大なひやかしの声を背中に、あたしたちは逃亡した。  先頭車両まで、黙って歩く。  時々、ちらっとふりむく彼に、あたしは微笑みを返す。  きゅっと強く手をにぎり返す。  彼は白い歯を見せて、うれしそうに笑う。  こんな日がくるなんて、夢にも思わなかった。  鈴城くんの一途さは知っている。  その気持ちが、今あたしに向いていることが不思議でしょうがない。     
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加