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「あたしも、うれしい」
小さい声でそういったとき、まわりから拍手がおこった。
「おめでとー」
同じ車両にのっていたひとたちが、あたしたちを祝福してくれている……!
「よかったね!」
ほとんどが知らないひとだったけど、何人かは見知った顔だ。
中学の同級生も、よく見たら数人いるし!
「澪ちゃん、おめでとう!」
「幸せにしてもらうんだよ!」
ひやかすような声が飛んでくる。
恥ずかしい!!!!!
あたしは顔から火が出そうになった。
鈴城くんをちらっと見れば、彼も真っ赤な顔をしている。
「ごめん、まわり見えてなかった」
ささやくようにそう言うと、彼はあたしの手をひいて移動をはじめた。前の車両にいくつもりらしい。
ひゅーっと盛大なひやかしの声を背中に、あたしたちは逃亡した。
先頭車両まで、黙って歩く。
時々、ちらっとふりむく彼に、あたしは微笑みを返す。
きゅっと強く手をにぎり返す。
彼は白い歯を見せて、うれしそうに笑う。
こんな日がくるなんて、夢にも思わなかった。
鈴城くんの一途さは知っている。
その気持ちが、今あたしに向いていることが不思議でしょうがない。
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