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第15章 わたしの前にだけ開かれた扉
それからは毎日、とは言わない。でもその一回きりで終わったわけじゃなかったことは事実だった。
こちらからはやっぱり申し出られない。彼が求めているのは単に他人の身体の温かさであり、別にそういう意味合いでわたしに触れたいと思ってるわけじゃないだろう。
だから躊躇したり思い悩むのはただの考え過ぎかもしれない。寒くてたまらない日にお互いの体温を分かち合って暖めあう。本当におかーさん一家のしていることと同じだ。
日に日に寒さが厳しくなっていくにつれ、自然と猫たちがソファの上や床の片隅でぎゅうぎゅうと押し合いへしあい、無理やりにくっつき合っているのを見かけることが増えてきた。
仔猫たちのその無心な闇雲さに思わず顔が綻びて、つい微笑ましい思いで家事する手や足を止めて眺めてしまうけど、猫たちがこの態勢をとるってことは今日は平均より一段と寒さが厳しい日ってことだ。そのことに思い至るたびなんとも言えない気持ちになる。
彼らの気温変動に対しての感受性はいつもかなり正確だった。部屋の中だから我慢できないほど寒くはならない。だけど真冬のように本気で暖房してはいないからか、外の世界の変化を敏感に感じ取ることができるらしい。
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