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「はい、差し入れだよ。今年も頑張りな」
彼女は凍らせたペットボトルを俺とつぶあんさんに差し出した。俺はオレンジジュース、つぶあんさんはグレープジュースだ。若い頃好きだったものを今でも覚えていてくれている。
「おばあちゃんいつもありがとう。これ、僕の故郷のお菓子。よかったら食べて」
「おや悪いねぇ。帰ったらいただくよ」
あ、ずるいぞつぶあんさん。俺も何か用意しておけばよかった。どうして今まで思いつかなかったんだろう。
俺は焦ってカバンに手を突っ込み、最初に手に触れたものを取り出した。それはゲームセンターでゲットしたまま入れっぱなしにしていたリスのキャラクターのぬいぐるみだった。
「おばあちゃん!こんなのしかないけど、よかったら…」
「可愛いお人形だね。うちのジジイが喜びそうだ。ありがとう」
よかった。受け取ってくれた。俺はホッとして顔が緩むのを感じた。
彼女は俺とつぶあんさんの新刊を購入して去っていった。
彼女の背中を目で追っていると、彼女はゆっくりと会場内を歩きながら何度も立ち止まり、たくさんの人に話しかけていた。
つぶあんさんがポツリとつぶやいた。
「来年も会えるといいですね」
「…そうですね。きっと会えますよ」
来年は俺もお菓子を持ってこよう。だからおばあちゃん、元気でね。
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