おまけ:みんなの女神ばあちゃん

3/3
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
「はい、差し入れだよ。今年も頑張りな」  彼女は凍らせたペットボトルを俺とつぶあんさんに差し出した。俺はオレンジジュース、つぶあんさんはグレープジュースだ。若い頃好きだったものを今でも覚えていてくれている。 「おばあちゃんいつもありがとう。これ、僕の故郷のお菓子。よかったら食べて」 「おや悪いねぇ。帰ったらいただくよ」  あ、ずるいぞつぶあんさん。俺も何か用意しておけばよかった。どうして今まで思いつかなかったんだろう。  俺は焦ってカバンに手を突っ込み、最初に手に触れたものを取り出した。それはゲームセンターでゲットしたまま入れっぱなしにしていたリスのキャラクターのぬいぐるみだった。 「おばあちゃん!こんなのしかないけど、よかったら…」 「可愛いお人形だね。うちのジジイが喜びそうだ。ありがとう」  よかった。受け取ってくれた。俺はホッとして顔が緩むのを感じた。  彼女は俺とつぶあんさんの新刊を購入して去っていった。  彼女の背中を目で追っていると、彼女はゆっくりと会場内を歩きながら何度も立ち止まり、たくさんの人に話しかけていた。  つぶあんさんがポツリとつぶやいた。 「来年も会えるといいですね」 「…そうですね。きっと会えますよ」  来年は俺もお菓子を持ってこよう。だからおばあちゃん、元気でね。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!