いつもあったもの

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刺すような光に照らされ目を覚ますと佐野光人 (さのみつひと) は改めてベランダに立ち、振り向く、 やっぱりない。 昨日の帰り道それに気づいた光人はずっと考え込んでいたままどうやら寝てしまっていたようだ。 普段から影は薄い方だがまさかなくなってしまうとは夢にも思わない。影がなくなったからどうということはないが、それでもなんだかこの世の者ではなくなったような気分になる。いつものように朝食を済ませ学校へと向かうといつものように親友の瀧川裕也(たきがわゆうや)が声をかける。 「よっ光人」 裕也とは中学からの付き合いで人懐こく愛想がいい顔が広く男女問わず彼を慕っている自分とは真逆の人間だ。 「あのさ、、裕也。俺の後ろみてくんない?」 「後ろ?」 言われるがままに裕也は光人の背後へと回る 「影がないんだよ。」 頭のおかしい質問だが事実なのだから仕方がない 「なにいってんだおまえ。影?あんじゃんほら、おまえと一緒に歩いてるよ。」 その答えに思わず振り向く いや、やっぱりない 「なに寝ぼけてんだよおまえ。また夜遅くまで本でも読んでたんだろ。」 裕也が気を使っている様子もないしそもそも気を使うような奴でもない。確信した。自分にだけ影がみえないのだ。 そのまま考え込みながら歩いていていると とんでもないものが目に飛び込む。それは異常な光景だった。首のない小学生が歩いている。それはとても普通に住宅街に馴染んだようにただただ歩いている。気づけば光人はその場に崩れ落ちその小学生を指差していた。 「あ、、あれ、、」 言葉が出てこないとはこの事だ。それは恐怖と違い感動とも違うひたすらおののき狼狽することしか出来なかった。一方の裕也は何も見てないと言わんばかりにひたすら光人の肩を揺らしている 「おい、おまえ本当に大丈夫か」 首なしの少女がその場を通り過ぎた後も光人は動けずにいた。
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