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纏持ちの誇り
逃げてきた男から、火は神明神社に迫っているとの知らせを受け、縹之介は舌打ちした。思ったより火の足が速い。前方、黒い煙の中で炎の端が勢い迫っていた。
ちょうど、も組の梯子持ちが姿を表した。
「待ってたぜ、平助!」
重い纏を持っているとは思えないほど軽々と長屋の屋根に登る縹之介。
「おらああぁあぁ!」
も組の纏が高々と上がる。そこに火消しの面々が次々に集まってきた。も組の火消したちは手前の川の中で藍の半纏いっぱいに水を含ませ、次々と梯子を上って家を解体していく。縹之介の立つ屋根では纏の下で馬簾が舞う。先ほど別れた頭も姿を現した。
やがて前方で振られていため組の纏が降りた。消し止められなかったようだ。
「め組の奴ら、去年は力士と喧嘩してたが、火には敵わねえか!ここで消し止めるぞ!」
火と対峙しながら、纏を振る手を止めずに、縹之介は仲間を激励した。
堀を挟んで火を迎え撃つ。そうでないと止められないほどの勢いだった。
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