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気付いた時には侑士の腕の中にいた。
苦しいような、だけど温かくて、懐かしい匂いに包まれている。
「やっと言ってくれた」
頭もとで、溜め息にも似た侑士の声が落ちて来た。
思いが伝わることがこんなにも嬉しいなんて、初めて知った。
ずっとこうなることに怯えていた。
たった一人、どうしても失いたくない人と、いつか終わりのある関係になることが怖かった。
だけどこの腕は、そんな心配を溶かしてくれるように、私の身体を優しく抱きしめてくれている。
「ねぇ、侑士。遠回りしちゃったけどあの告白まだ有効?」
侑士の胸に顔を埋めながら、聞いてみる。
「有効もなにも、もう断られてるし」
「じゃ、じゃあ、やっぱりダメ……?」
心地よい温もりを自分から引きはがし、愕然とする。
そんな私の顔を見た侑士はぷっと吹き出して、また腕の中に私を引き戻す。
「嘘。10年待ったんだから全然余裕」
俺ってばひたすらお前一筋だから。
そんな侑士の言葉に何も言い返せなくなってしまう。
顔が見えていなくて良かった……。
真っ赤になった顔と、嬉しくて緩みまくった表情を晒すのは、取れかかったメイクを見られるよりも恥ずかしいから。
まだもうしばらく後でいい。
だって、これからはーーー。
ただひたすらに君だけを好きでいるんだろうから。
そう思うから。
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