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「姉さん? 起きてる?」
元は聖の私物だったマンションの鍵を使い、部屋へ入る。返事はない。
つるりと、冷や汗が蒼の背中を撫でた。
普段必ずといっていいほど開けっ放しになっているリビングへ通じるドアが、今日は、閉まっていた。蒼は、はやる気持ちを必死の抑えながらも廊下を早足で歩き、ドアを勢いよく開いた。
「……姉さん?」
いつもテレビの前にあるソファーでぐうぐう寝ている彼女の姿が見当たらない。おまけに、こんなに暑いのに冷房もついていない。むわっとした不快な空気が蒼の全身にまとわりつく。
リビングを歩いて見て回る。やはり彼女の姿はない。どこかに出かけているのだろうか?
しかし、ローテーブルに置かれた大量の取材資料に混じって、彼女のスマホと財布がある。外出するなら、この最低限でもこの二つは持っていくはずだ。
蒼は廊下に出て、トイレを覗いた。いない。
向かいの洗面所に仄かな明かりがついているのが見え、蒼はそちらへ入った。
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