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 ――何やってんだ、俺は……。  はぁ、と大きく息を吐くと、腰を屈めて頭を押さえた。  蒼は病室を離れ、休憩室のベンチにひとり、腰掛けていた。  患者同士の雑談、機械の電子音やナースコール、看護師や医師の行き交う足音が聞こえてくる。  ――こういうとき、聖さんなら、あの人なら……きっと俺みたいに怒鳴ったりしないんだろうな。 『なんで姉さんを結婚相手に選んだんですか?』  あるとき、蒼は聖にこんな質問をしたことがあった。 『え?』 『弟の俺が言うのもあれですけど――姉さんは、見ての通り大雑把だし、ガサツだし、家事なんて全くできない。女らしい一面も何もないのに……』  ――蒼はずっと気になっていた。聖が、藍子という女性のどこに惹かれたのか。  この温和で優しすぎるくらい優しい男なら――きっと表立ってすごくモテるわけではないだろうけど――大半の女性には好感を持たれるだろうから。  蒼は弟という近い立場だからこそ、藍子の良さをよく知っている。けれど彼女は、慎ましくて男性の前では一歩引く良妻賢母的な良さは持ち合わせていない。むしろその逆で、自由奔放で猪突猛進。一般的な『いいオンナ』には当てはまらない型破りな女性なのだ。  聖は、目を丸くしたあと、その顔にかすかな笑みを浮かべた。 『一言で言うのはすごく難しいんだけど……』  ――と、最初に言って、聖は話し始めた。
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