7人が本棚に入れています
本棚に追加
***
蒼に言われた通り、ナースコールで看護師を呼んだ藍子は、医師の診察を受けた。
「――うん。顔色もいいし、問題はなさそうですね。一応、あと三十分ほど安静にしてもらって、何もなければ、帰宅していただいて構いませんよ」
藍子は再びベッドへと戻った。ため息をつく。
――あとで、蒼に謝らないと。
感情を表に出さない彼があんな風に怒るのは、滅多にないことだ。それだけ彼は自分のことを気にかけてくれていたのに、自分が無下な態度をとってしまったせいで、彼を、傷つけてしまった。
――早く、帰りたい。
静かな病室でひとり、じっとしていると、いやでも、あの三年前の出来事が脳内で再生される。藍子は、逃れるようにぎゅっと目を瞑った。
最初のコメントを投稿しよう!