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――ドアが開いた先に、二人の影が見えた。
一人は蒼だ。ただその蒼も緊張の面持ちで、自分を見つめていた。
そしてもうひとりは、やけに背が高かった。男性だろうか。一瞬、逆光になって、シルエットだけが浮かび上がった。やけに細く、そして顔が小さかった。モデルみたいに細長かった。
そのシルエットを、藍子は幾度となく目にしたことがあった。テレビ越しに、スマホ越しに――あるいは、雑誌の表紙越しに。
――そういえば蒼が『姉さんのよく知る人物だから大丈夫だ』と言ってたっけ。
「こんにちは」と、相手が言った。
その声を、藍子は知っていた。彼女の耳は、覚えていた――二年半前の、あの日からずっと。
相手が誰かを認識した瞬間、彼女の目からは唐突に涙が溢れてきた。
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