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――あのとき、聖はこう言った。
『彼女はさ、そうやって喜怒哀楽が分かりやすくて、見ていて、愛おしくなるんだ。とても』
それにね――
『僕ね、彼女の笑顔が、すごく好きなんだ。明るくて、パワーをもらえる。まるで向日葵みたいで』
――そう、聖さん。俺もそうだよ。姉さんの笑顔が、好きなんだ。あのきらきら輝く、明るい笑みが。
自分の部屋に飾っている、ウェディング姿の藍子の写真を思い出した。蒼が、世界で一番美しく、一番好きだと思う、彼女の姿だ。
今はまだ――あの笑顔を取り戻すことはできない。
だけれど――いつかまた、何年、何十年かかるか分からないけれど――彼女は、あの向日葵のような眩しい笑顔を見せてくれるだろう。
その頃にはきっと、二人で、聖の話をして、懐かしさを覚えながら、笑い合えるはずだ。
どうか――その日まで。
夏祭りのあの日――二人で夜道を手を取り合って歩いたように。
二人で手を取り合い、支えて、支えられて、時折ぐらつきながら、何度も迷いながら、歩いていこう。
例え、胸がかきむしられるような虚無感が襲ってきても、言いようのない孤独感が心を暗く覆っても――
藍子には、蒼が。そして蒼には、藍子が、いる。
そう――この世で唯一無二の、姉弟という家族が、いつも隣に――いるのだから。
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