エピローグ

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「蒼っ! 早くしないと、遅れちゃうよ!」 「姉さん、慌てすぎだって。まだ大丈夫だよ」  ヒールなのにバタバタと先を急ぎ、忙しなく走る藍子を追いかける。蒼の手には二枚のチケットが握られていた。  今日は、青木ゆうの記念すべき主演舞台の初日だ。なんと青木ゆう本人が、ぜに見に来てほしいとチケットを郵送してくれたのだ。 『――え? お姉さんを元気づけてほしい?』  藍子が熱中症で病院に運ばれた七年前のあの日――蒼のスマホにテレビ局から電話がかかってきた。例のインタビュー企画にあなたが選ばれたと告げられた。詳しい打ち合わせをしたいので、今すぐ指定の場所に来れるか、と訊かれ、蒼はすっ飛んでいった。ホテルの一室に呼び出され、先に到着していた青木ゆうに、蒼はひっくり返りそうになった。てっきりテレビ局のスタッフと話すものだと思っていたから、まさか本人が現れるとは夢にも思わなかった。
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