エピローグ

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 青木ゆうが今まで公にしていなかった弟の存在、それに伴う過去の話は、そのままテレビで放送され、当時、かなりの話題を呼んだ。なかには、視聴率をとりたいがための作り話と揶揄する一部のアンチもいた。  それまでずっと隠していたはずの、彼のルーツである弟の存在を、青木ゆうはなぜ――たとえテレビの企画といえども――ただの一般人の藍子に打ち明けたのだろう。  藍子は、青木ゆうからヒントをもらったと言っていた。蒼が、藍子に亡き夫がいることを、彼に、事前に説明していたからなのか。彼は、求められればそれに応える、そういう生き方で今の地位を築き上げた、と言っていた。  愛する者の死という、強烈な事実の受け止め方を、亡き弟のエピソードを語ることで、彼なりに、藍子に教授したつもりなのかもしれない。  求められれば――と、それが誰であろうと、ただの一般人の蒼の願いでさえも、見逃さずに拾って、彼なりの応え方をする。それに、蒼は驚いた。応え続ける、その、彼の揺るぎない献身の姿勢に。そしてその生き方を創り上げた、彼の弟の存在の大きさに。
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