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「お! 部屋綺麗になってるじゃ〜ん。ありがと! 蒼」
「……はいはい」
シャワーを終えるなり、髪がビチャビチャのまま、藍子はどっかりとソファーに座ってテレビをつけた。
「あっ、青木さんだ〜!」
ひときわトーンの明るい声だった。見ると、藍子はテレビ画面に釘付けになっていた。子供のように目をきらきらと輝かせる姉の視線の先には、俳優の青木ゆうが映っていた。
――あぁ、姉さんが好きな芸能人か。
俳優・青木ゆう。その独特の存在感と演技力が評価され、三十半ばにして実力派俳優という確固たる地位を築いている。容姿はすらりとしたモデル体型。脚も長く、顔も小さい。目元は涼しげで、肌も白い。
ただ、彼はけっして女子たちにキャーキャー言われるようなイケメン俳優の類ではない――が、姉の藍子は、彼にご執心だ。
「姉さんは……この人のどこが好きなの?」
「えー? どこが好きかって改めて聞かれると難しいなぁ〜。うーん。全部!」
「全部?」
「うん! 演技も性格も容姿も全部好き。なんかもう、どの部分が〜とかじゃなくて、青木さんそのものが好きって感じ」
「ふぅん」
青木ゆうは、個性の強い芸能人の中ではむしろ、あまり目立たず、静かに淡々と生きているというイメージだ。藍子が彼の何に惹かれたのか、弟の蒼としては気になるところだった。
「好きになったきっかけとかは?」
「えーっと……」
――と、いつの間にか冷蔵庫から取り出したオレンジジュースを片手に、藍子はふと目線を上げ、過去を回帰する。
「……あはっ! やっばい。全く覚えてないわ〜」
けろりと笑って、ジュースをグビグビ飲みながら、藍子はざっくばらんに言い放った。
「っていうか、めずらしー。青木さんがバラエティ番組出てるなんて」
藍子は目を丸くする。どうやら近日放送予定のテレビドラマの番宣で出演しているようだ。
『えーでは、ここで【青木さんが自宅に突撃!インタビュー】のコーナーです』
番宣の企画の一環で、青木ゆうが一般人の家に訪れて、一般人と話をしてインタビューをするというものらしい。
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