55人が本棚に入れています
本棚に追加
二回目に泊まった朝、
「お前、昨日うるさい」
とキシが真面目な顔で言った。
「えっ」
「寝言、すごい言ってた」
あの時の声がうるさいと言われたのかと思った。キシは僕の顔色を見て、
「そっちのうるさいじゃねえよ」
と、まだ真面目な顔をして言った。
キシはコーヒーメーカーを持っていて、朝はコーヒーを淹れてくれた。いつもテーブルに向かい合わせに座って飲んだ。そんなに美味しくなかったが、彼がマグカップに注いでくれるので嬉しかった。
「なに言ってた?」
「起こしたことは覚えてないのか」
「ごめん、覚えてない」
キシは眉間に皺を寄せて、コーヒーを飲んだ。
「そんなにうるさかった?」
「おお、うるさかった。ちょっとソファーに避難した」
「…」
次は泊まらないで帰ろう、次があったらだが、と心の中で呟いていると、キシはにこっと笑い、
「俺が原因かと思って」
と言った。
「なにが?」
「俺が下手すぎて、後でうなされる」
僕は、ぎゃはは、と笑った。
「やめろよー」
「いやいや。この前は、泣いてたし」
「…あー」
「そんなに下手?」
「ばーか、やめろって」
最初のコメントを投稿しよう!