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二回目に泊まった朝、 「お前、昨日うるさい」 とキシが真面目な顔で言った。 「えっ」 「寝言、すごい言ってた」 あの時の声がうるさいと言われたのかと思った。キシは僕の顔色を見て、 「そっちのうるさいじゃねえよ」 と、まだ真面目な顔をして言った。 キシはコーヒーメーカーを持っていて、朝はコーヒーを淹れてくれた。いつもテーブルに向かい合わせに座って飲んだ。そんなに美味しくなかったが、彼がマグカップに注いでくれるので嬉しかった。 「なに言ってた?」 「起こしたことは覚えてないのか」 「ごめん、覚えてない」 キシは眉間に皺を寄せて、コーヒーを飲んだ。 「そんなにうるさかった?」 「おお、うるさかった。ちょっとソファーに避難した」 「…」 次は泊まらないで帰ろう、次があったらだが、と心の中で呟いていると、キシはにこっと笑い、 「俺が原因かと思って」 と言った。 「なにが?」 「俺が下手すぎて、後でうなされる」 僕は、ぎゃはは、と笑った。 「やめろよー」 「いやいや。この前は、泣いてたし」 「…あー」 「そんなに下手?」 「ばーか、やめろって」     
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