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「糸の端っこ、玉結び出来てるか?」
「あ、忘れてた。サンキュ」
ましてや他人のシャツのボタン付けを、それも服着たままでつけるなんて離れ技、見たこともない。
まさか図書室に入るなりこいつに裁縫セットを渡されるなんて、そんでもってボタンつけてと言われるなんて想像したことがあっただろうか、いや、ない。
指先が震える。針にまでその振動が伝わる。
ボタンがうまくつかめない。そこまで不器用じゃないはず。
ものすごくこいつの視線を感じる。髪に、頬に、指先に。
そんなにじっと見ないで。尚更震える。
「なあ。もしかして意識してる?」
「何を?」
「俺を」
「イミフ」
おかしい、こいつと私はただの委員会仲間。何故こんなに心音が高くなる?
顔も火照ってる気がする。
ああそうか、緊張してるんだ。そう緊張、それそれ。
「手、持ってようか?」
「それに何か意味が?」
「そりゃやっぱ初めての共同作業、ってやつ?」
……尚更作業しづらいじゃない?
顔を上げる私に向かってこいつがにんまり笑う。
ボタンをつまんで私の掌にボタンを落とし込むと、そのままふんわりと包んできた。
暖かい。
やばい、このシチュエーション。
いやこれは吊り橋効果。きっとそうそれ。
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