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「はい?」
『ああ、モモカちゃん? 私、灰田のおばちゃんよ!』
「待ってください。今開けます」
モモカは靴を履き直して、ドアを開けた。
そこには、青い顔をした灰田が立っていた。
「どうしたんですか?」
「ああ!! もうご両親は出発された後?」
「そうですけど……」
何か急用だろうか。
モモカは嫌な予感がした。
「実はね、うちの『くーちゃん』が居なくなっちゃったの!」
「くーちゃん?」
「猫よ! 三毛ちゃんなんだけど! ほら、昔モモカちゃん見たことあるでしょう!?」
「ああ、あの猫ちゃんですか」
子供の頃、抱かせてもらったことがあるのをモモカは思い出した。三毛猫で、名前はクルタだった気がする。だから「くーちゃん」か、とモモカは納得した。
「居なくなったって、どうしてですか?」
「それが分からないから、こうしてお宅にお邪魔したのよ! ほら、探偵をなさってるでしょう? この間、迷子のワンちゃんを探す依頼があったってお聞きしたから、くーちゃんのこともお願い出来ないかしらって……。けど、遅かったみたいね。ああ、くーちゃん……」
依頼の内容を外に漏らすなよ、とモモカは内心で息を吐いた。
そして、次に言われるであろう台詞を想像して息を呑んだ。その予感はまさに的中することになる。
「あのね、モモカちゃん……。よかったら、この依頼引き受けて下さらない……?」
やっぱり!
モモカは今度こそ溜息を吐いた。
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