三毛猫探し

3/32
前へ
/149ページ
次へ
 モモカは図書館の司書を目指そうと心に決めていた。だから、その資格が取れる大学――そして学費が安いところを目指して、夏休みの宿題以外にも大学受験の勉強もこなしている。「受験は入学した時から始まっています!」と誰かが言っていた。本当にその通りだと思う。少しスタートが遅れたら、どんどん突き放されて置いて行かれてしまう。モモカはそれが怖かった。だから、夏休みはとことん勉強漬けにしようと心に決めていたのだ。  どこにも出かけず、ただひたすらと自分が決めたタイムテーブル通りに勉強をしよう。それが一番だと思っていた。 「うーん……。ちょっと休憩……」  モモカは伸びをした。  ちょうど、数学の公式問題を終えたところだ。モモカはページを閉じた。表紙には「夏休みの友達」とでかでかと手書きの文字が印刷されている。汚い字だ。読みにくい。モモカはその表紙を見るたびにそう思っている。  モモカは立ち上がった。台所で麦茶でも飲もう。と思ったからだ。すると、玄関のドアが開く音がした。母親だ。買い物から帰って来たのだろう、とモモカは思った。  案の定、音の主は母親で、玄関から大声でモモカの名前を呼んだ。
/149ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加