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「モモちゃ~ん! 大変大変!」
「どうしたの!?」
モモカは駆け出した。落ちないように気を付けながら階段を降りる。すると、母親が玄関でへなへな、と効果音が付きそうな具合でへたり込んでいた。モモカは心配になって彼女に声を掛けた。
「お母さん! どうしたのそんな疲れた顔して!」
「ああ……。モモちゃん……。私どうしたらいいのかしら……」
母親は手を胸の前で組んでそう言った。何がなんだかさっぱり分からない。
とりあえず、モモカは母親からエコバッグを受け取って、台所まで運んだ。中にはきゅうり、ハム、黄色い麺が入っていた。今日の夕飯は冷麺か、とモモカは思った。
それに続いて、よれよれと母親も台所に入って来た。
「とりあえず、お茶でも飲みなよ」
モモカはコップに麦茶を汲んでやった。「ありがとう」と礼を言って、彼女はそれを一気に飲み干した。そんな飲み方はどうかと思ったが、モモカは口を出すのを止めた。
麦茶を飲んで落ち着いたのか、母親は「ふう」と息を吐いた。いや、溜息を吐きたいのはこちらだ、とモモカは心の中で思った。
「で。どうしてそんな顔しているの? お母さん」
モモカは訊いた。
「どんな顔をしている?」
「運を使い切ったような顔」
「そう……。お母さん、今年の運を使い切っちゃったかもしれない……」
「どういうこと?」
尋ねるモモカに、彼女はカバンから封筒を震える手で取り出して言った。
「見てこれ……。商店街の福引で当てちゃったんだけど……」
そう言う彼女の声も震えていた。
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