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八月三日はすぐにやって来た。
両親は大きなトランクに荷物を詰めて玄関でタクシーを待っている。
「それじゃあ、行ってくるけど、モモカ……。なにか困ったことがあったら絶対に連絡するのよ」
「分かりました」
何度も聞いたその言葉を、モモカは半分聞き流す形で答えた。
「一応、隣の灰田さんには留守にするって言ってあるけど……」
「分かった。なにか困るようなことがあったら、灰田のおばさんを頼るよ」
「ええ。そうしなさい」
「母さん! タクシーが来たよ!」
黄色いタクシーが家の前で止まった。
父親もモモカに向き直って言う。
「モモカ。本当に大丈夫だな!?」
「大丈夫。十日間なんてあっという間だよ。安心して」
「そうか……。なら良いが……」
「お客さん、荷物、トランク開けますね~」
運転手の声で二人ははっとして、それぞれの荷物を運転手に渡した。重そうだ。
「それじゃあ、モモカ。元気でね」
「お土産買ってくるからな!」
「発車します~」
運転手の声と共に車は走り出した。
その姿が見えなくなるまで、モモカはそれを見送った。
「さて、今日はどうやってすごそうか……。いけない! まだ現代文が残ってるんだった」
モモカは靴を脱ぐと、玄関に上がった。これからやるべきことは山積みだ。
その時、インターフォンが鳴った。
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