恐怖を覚え、心に鎖

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 三兄弟の真ん中に生まれた僕と弟は、一番上の、不登校の兄を見て育ってきた。部屋にこもりきりの兄に対し、両親は怒りより悲しみを覚えていた。下の僕たちには、「辛い事があったらいつでも聞くからね。きっとお兄ちゃんは、その辛い事を吐き出せれなかったからああなったと思うの。」涙を浮かべながら続けた「お兄ちゃんも自分の意思が故決めたことだし私たちも受け入れてる。だから、お家のことは心配せずに、元気に学校へいってきてね。」そう言ってくれている。  兄に対して攻めることはない両親だが、僕は違う。もう両親を悲しませられない。だから相談なんてできっこない。恐らく弟もそうだろう。  できれば喜ぶ事をしてあげたいが、その「喜ぶこと」が思いつかない……。でも、今日母の方からメールで良い事があったから早く帰ってくるよう言われたから、とりあえず元気なようだ。 「はなしてください……。」  不意に耳に入ってきたのは、あや香さんの声だった。間違いない、通学路を外れた路地から聞こえたぞ。気になる……気になってしまう。でも母がせっかく機嫌が良いのに寄り道するのは気が引けるな……。 「よし。見に行こう。」  コレは覚悟の声出しだ。単純明快な言葉ほど、口にすると無い勇気がわいてくる。というよりは理性を少し失える。 「何が?」  どんどん近づく路地からそう聞こえた。声から想像がつくよ、僕以下の薄汚いゲロ糞野郎だ。そして確信がついた。あや香さんの「はなして」は、「話して」じゃない……「離して」なんだ! 「ごめんなさい私……そういうのはちょっと」 「何で?いいじゃん?別に。ねぇ。」     
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