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「本当に馬鹿だよね、君」
「…?」
お菓子作りに厨房を借りて料理をしていたある日の事。
今日は甘くないサクランボみたいなールルの実ーを使ったカップケーキを作ろうとしていたら、突然厨房に誰かが現れた。
いつもはいいニオイに誘われて来る人がいてカップケーキをお裾分けするが、まだ小麦粉を混ぜてる段階だからニオイに誘われたわけではなさそうだ。
現れたのは可愛らしい少女のような顔の少年だった。
確か見習い騎士のイブだ。
ハイドに憧れて入ったといろんな人に言っていたのが印象的だった。
イブは瞬が気に入らないのかいつも瞬に突っかかり瞬を困らせていた。
でも瞬は嫌いになれなかった、自分が作った事を言わずにイブに食べさせたいとリチャードにカップケーキを渡してイブに食べさせた時があった。
その時のイブの顔と「美味しい」と呟く素直な心に瞬はイブが何を言おうとも嫌いになれなかった。
後に瞬が作った事がバレて殴り込みに来たけど…
今日はどうしたのだろうかとルルの実をすり潰しながらイブを見る。
イブはいつもみたいないたずらっ子のような悪い顔じゃなく、なんか元気がない印象だった。
「何にも知らないなんて本当に幸せものだよね、結婚するって言うのに…」
イブから発せられた言葉に首を傾げる。
結婚?誰が?
瞬に言うって事は瞬の知り合いだろうかと考える。
リチャードは恋人いないし、なにかあったら教えてくれそうだ。
他の騎士が結婚するのだろうか、でもわざわざイブが言いに来るのは変だ。
となるともしかして報告に来たのだろうか、それだったら納得出来た。
「えっと、イブくんが結婚するの?」
「ばっかじゃないの!…本当なら僕が結婚したかったよ」
イブは辛そうな顔をして俯いてしまった。
なんか変な事を言ってしまっただろうかと容器を置きイブに駆け寄る。
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