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するとイブの頬に一筋の涙が溢れていて驚いた。
…イブが泣いてるのを初めてみた。
なにかまずい事でも言ってしまっただろうか。
どうしようかとオロオロしていたらキッとイブに睨まれた。
「ハイド様のお前への愛は偽者だったって事だよ!!」
「……え?」
イブはそれだけ言い走って厨房を出てしまった。
…なんでそこでハイドの名前が出て来るのか…偽者ってなんなのか分からなかった。
分からなくて分からなくて、とても不安な気持ちになった。
後ろを振り返ると混ぜかけの生地が入った容器が見えた。
明日からハイドはしばらく出かけるみたいだから御守りのカップケーキを作っていたんだと思い出し続きを作る。
…その間でも瞬の心に残るのはイブの涙と言葉だった。
瞬は気付いていなかった…イブはハイドが好きなのだと…
でもイブはハイドが自分を見てくれない事をすぐに気付き、ハイドの前では自分の気持ちを表に出さないようにしていた。
だからそのストレスが瞬に向かうわけだけどイブを嫌わず苦笑いで全て受け流す瞬に困惑していた。
…そしていつしか瞬なら、ハイドを幸せに出来るのではないかと思い始めていた。
だからイブは涙したんだ。
あの噂を聞いてしまったから…
ーーー
カップケーキが完成してラッピングをしてからハイドがいる部屋に向かって歩いていた。
まだモヤモヤするがハイドの顔を見れば晴れるだろうと思っていた。
廊下を歩いていると話し込む2.3人の噂好きのメイド達がいた。
通行人に目もくれずお喋りに夢中のようだ。
瞬も素通りしようとしてある言葉が耳に入り足を止めた。
「ハイド様、ご結婚なさるそうよ」
ハイドが…結婚?
盗み聞きをしたいわけじゃないがきっと瞬が声を掛けたら逃げてしまいそうだから話の内容が気になりそっと立って聞く。
影が薄いのが役に立つ日が来るなんて瞬は今日一番に感謝した。
話を聞くにつれ鼓動が早くなり、胸が苦しくなった。
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