第一話

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…でも、聞かなくてはならないと思った。 それがただの噂でモヤモヤが晴れる事を信じて… 「それではお相手はやはり瞬様で?」 「いいえ、違いますわ…お相手は婚約者のミゼラ様ですわ」 「まぁ、瞬様がいらっしゃるのに婚約者がいたんですの!?」 「婚約者が現れたのは最近の事だと聞いていますわ、明日はミゼラ様に会いに行かれるそうですわ」 「瞬様は男性ですから子を産めません、ほらハイド様のご実家は貴族の中でも上位の家柄ですもの」 「…瞬様お可哀想に、ハイド様もいつまで隠し通す気ですの?別れの日が別の方との結婚式などと、私でしたら堪えられませんわ」 瞬はこれ以上聞くのが嫌でその場を後にした。 噂、噂と心の中で唱えてももしかしたらと思う自分もいた。 本人に聞けばいいが、聞くのがとても怖かった。 まだ知らないフリをして今日はカップケーキを渡して帰ろうと思いハイドの部屋の前で足を止めた。 ドアをノックしようとして上げた手を止める。 …あぁ、どうして聞きたくない話ばかり聞いてしまうのだろう。 「ハイド、明日手土産ぐらい持ってったらどうだ?」 「…必要か?」 「お前なぁ、相手は巫女様だぞ?仮にもお前の婚約者なんだから」 「……」 「睨むなよ……それにしても瞬様に言わなくていいのか?」 「…あぁ、瞬を悲しませたくないからな」 「そうか…結婚、するんだもんなハイド様は」 …結婚、じゃあ本当に? ノックをしようとした腕は下ろされていた。 ハイドはいつから決めていたのだろうか…もしかしたらずっと前から… 男と付き合うのに抵抗があったのだろうか、だから女性と結婚するのだろう。 ハイドは優しいから言えずに過ごしていたのだろう。 でもそれは残酷な優しさだと感じた。 そのまま声を掛ける勇気もなくその場を後にした。
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