44人が本棚に入れています
本棚に追加
…でも、聞かなくてはならないと思った。
それがただの噂でモヤモヤが晴れる事を信じて…
「それではお相手はやはり瞬様で?」
「いいえ、違いますわ…お相手は婚約者のミゼラ様ですわ」
「まぁ、瞬様がいらっしゃるのに婚約者がいたんですの!?」
「婚約者が現れたのは最近の事だと聞いていますわ、明日はミゼラ様に会いに行かれるそうですわ」
「瞬様は男性ですから子を産めません、ほらハイド様のご実家は貴族の中でも上位の家柄ですもの」
「…瞬様お可哀想に、ハイド様もいつまで隠し通す気ですの?別れの日が別の方との結婚式などと、私でしたら堪えられませんわ」
瞬はこれ以上聞くのが嫌でその場を後にした。
噂、噂と心の中で唱えてももしかしたらと思う自分もいた。
本人に聞けばいいが、聞くのがとても怖かった。
まだ知らないフリをして今日はカップケーキを渡して帰ろうと思いハイドの部屋の前で足を止めた。
ドアをノックしようとして上げた手を止める。
…あぁ、どうして聞きたくない話ばかり聞いてしまうのだろう。
「ハイド、明日手土産ぐらい持ってったらどうだ?」
「…必要か?」
「お前なぁ、相手は巫女様だぞ?仮にもお前の婚約者なんだから」
「……」
「睨むなよ……それにしても瞬様に言わなくていいのか?」
「…あぁ、瞬を悲しませたくないからな」
「そうか…結婚、するんだもんなハイド様は」
…結婚、じゃあ本当に?
ノックをしようとした腕は下ろされていた。
ハイドはいつから決めていたのだろうか…もしかしたらずっと前から…
男と付き合うのに抵抗があったのだろうか、だから女性と結婚するのだろう。
ハイドは優しいから言えずに過ごしていたのだろう。
でもそれは残酷な優しさだと感じた。
そのまま声を掛ける勇気もなくその場を後にした。
最初のコメントを投稿しよう!