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翌朝、ハイドは昨日まで考えていた通り婚約者に婚約破棄を申し込むためにリチャードと共に城下町の入り口まで来ていた。
騎士団長と副団長が不在で心配事はあるが、長年敵対していたハーレー国は滅びたから安心していた。
実際ハーレー国以外の国はイズレイン帝国に喧嘩を売るほど馬鹿ではなく、清き友好関係を築いてきた。
あの凶悪な独裁国と呼ばれたハーレー国の騎士をたった一人で半分以上倒したハイド・ブラッドと残りの数を一人で倒しハイドをサポートしたリチャード・ヴァーンがいるのだから…
それに他の騎士達もそこそこ強く二人がいなくても城を守れるほどの力はある。
だから二人は信じて国を任せる事にした。
ハイド一人だけで十分だが婚約者がいる国はハーレー国と近いから念のためリチャードも同行する事にした。
ハイドは城を眺めていた。
いつもなら見送りに欠かさず来る瞬が来なくて不安だった。
さっき城を出る前に瞬の部屋に向かったがノックしても出なかった。
こんな事、今までなかった。
「瞬様だって毎日起きるの大変だろ?一日くらいのんびり寝かしてやれって」
リチャードはそう言って停めてある馬車に乗り込んだ。
それだけならハイドも構わない、ただ…何故か不安が全然消えない。
リチャードに急かされて馬車に乗る。
帰ってきたら瞬とゆっくり話そう。
悩みがあるなら一緒に考えて乗り越えよう。
馬車に乗っても目線はずっと窓の向こうに見える城に向けられていた。
泣き腫らした目では心配掛けるから会えないので瞬は屋根裏部屋の窓からハイドを見送った。
今朝ハイドが来た事が分かりとっさにドアを開けようとしたが、昨日の光景を思い出してドアの前で止まった。
ハイドが去っていく足音を聞き、もう枯れたと思った涙を流す。
気分転換に城下町を散歩しようと部屋を出た。
あてもなく歩き、ふといつも立ち寄るお菓子の材料が売ってるお店の前で立ち止まる。
ディスプレイにはキラキラしたお菓子の見本のレプリカが飾られていた。
いつもこのお菓子好きそうとか、喜んでくれるかな?とか考えて見いていた事を思い出す。
店員が店から出てきて常連の瞬を見つけ「買っていくかい?」と言ってくれたが首を横に振る。
もう、お菓子を食べてくれる人がいないなら作ったって無駄だ。
騎士の人達にも食べてもらえて嬉しかったが、やはり大好きな人に食べてもらうのとは全然違う。
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