第一話

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※ハイド視点 馬を走らせて急いで国に戻った。 城内の部下から伝書鳩で伝言を受け取ったからだ。 内心後悔でいっぱいだった。 何故、気にかけてやらなかったのか…今朝の事もそうだ…いろいろと思う事はあったというのに… 血が流れるほど強く拳を握りしめた。 伝書鳩の手紙にはこう書いてあった。 『瞬様が国に紛れ込んでいたハーレー国の騎士に襲われました、大至急お戻りください』 無事を祈った、大丈夫だと笑ってほしかった。 …そう願っていた。 イズレイン帝国に戻ると城下町は騒がしかった、ハーレー国の騎士がいたんだ…当たり前だ。 馬車から降りて人混みを掻き分け騒ぎの中心である路地裏に急いだ。 人が入らないようにバリケードをしていた騎士の横を通り抜けた。 女性が側で泣いていて騎士が事情を聞いているが、俺はすぐ目の前を見つめて身体が動かなくなる。 「……瞬?」 地面に横たわる愛しい者の名を呟く。 全身の温度が冷えていく。 リチャードも追いつき、目を見開く。 早く行かなきゃとやっと足が動き瞬の身体を抱き寄せる。 いつからここにいたのか、瞬の身体は冷え切っていた。 腹部は真っ赤に染まり、頬には涙の跡があった。 力強く抱きしめる。 息がない、分かってる…でもまだ何処かで助かるのではと思ってしまう。 瞬の髪に触れていると耳障りな声が聞こえた。 どうやら数人の騎士に押さえつけられているハーレー国の騎士が笑い出していた。 なにが、可笑しいというのだろうか。 …この男が瞬を奪ったのか。 瞬をそっと地面に寝かせて、腰に下げていた剣を鞘から抜きハーレー国の騎士に向かった。 「お前が、瞬を殺したのか」 「ひゃひゃひゃ!!バカな男もいたもんだ、弱いくせにヒーローぶるからこうなるんだよ!」
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