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まだ笑う男に押さえていた騎士に離すように命じて、でも逃がさないように足で踏む。
…瞬はこんな奴に殺されたのか。
いろいろ聞かなきゃいけない事は山ほどあった、でも今は頭に血が上っていた。
剣を振り下ろす…最後まで笑っていた男は舌を出し息絶えた。
きっとまだ、いるだろう…ハーレー国の騎士がコイツだけとは思えない。
ハーレー国の国王を倒して終わりだと思っていた自分の甘さが招いた結果だ。
一番殺してやりたいのは自分自身だ。
リチャードがハーレー国の騎士の死体を運ぶよう命じていて、瞬は俺が抱きかかえた。
瞬の魂はなくとも、墓に入るまではひと時も離れたくないと思いながら歩き出した。
ーーー
俺は路地裏に佇んでいた。
もう片付けられて何もないコンクリートの地面をそっと優しく触れた。
涙は愛する者が眠る棺の前で散々泣いたから枯れてしまった。
彼がこの世からいなくなり2週間が経過していた。
シオンの花を彼が最後にいた地に置く。
「君に渡す花が変わってしまった、すまない」
本当は別の花を渡し彼にプロポーズするつもりだった。
彼は自分を受け入れてくれたのだろうか…今となっては分からない。
枯れたと思っていた涙がまた溢れてきた。
冷たい風が頬を撫でる。
彼のような暖かさはないが、彼のような優しさがあるように感じた。
「もう一度、笑ってくれ…名を呼んでくれ…触れてくれ……俺を置いていかないでくれ、瞬」
崩れるように地面に座り込む。
足音が聞こえてそちらを見ると、心配して様子を見にきたリチャードだった。
リチャードは何も言わずただ俺を見ていた。
その場から逃げたもう一人のハーレー国の騎士も殺した。
…これで、仇は全て討った…少しでも安らかに眠れればいい。
立ち上がり空を見た。
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