第一話

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今日は青空が雲に隠されてしまった。 「リチャード、俺は残りの敵国の騎士を皆殺しにする」 「……皆殺しって…ハイド、冷静にな…」 れ…と続いたであろう言葉を呑み込んだ。 俺の瞳の鋭さは今まで見た事がないほど冷たかった。 厳しかったが優しさも持っていた俺はもうこの世にいない。 今いるのは愛する者を殺された怒りと悲しみを持つ男の姿だった。 俺は誓った、もう恋は絶対にしないと…彼だけを永遠に愛すると… ーーー 一年後、俺は血の滲む訓練の結果敵国が恐れるほど強くなりハーレー国の騎士を次々と殺してきた。 俺の瞳には感情が何もない。 どんな言葉で誘惑し、褒めても眉一つ動かさない冷酷な騎士団長となった。 言葉を交わすのはイズレイン帝国の王様と幼馴染みのリチャードだけ…それでも必要最低限の会話しかしない。 俺は変わった、誰もがそう思った。 きっと俺を元に戻せるのは今は亡き恋人だけだろう。 それともう一つ、俺には大きな秘密があった。 …その秘密は城の中だけで守られていた。 本人も知らない、秘密が… 今でもまだあの時の記憶が蘇る。 初めて君と出会ったあの場所… 初めて君が笑って泣いたあの日… どれもこれも綺麗で美しくて…もう二度と見る事は出来ない。 永遠に忘れる事はないだろう、君がいたこの場所…君の存在… 彼が眠る墓地の前で勿忘草(わすれなぐさ)の花を送った…あの時君に渡そうとしていた花を… 「もし、君が生きていたら届けようと思ってた花だ……送るのが遅くなってごめんな」 墓石を撫でる、彼は天から笑って見ていてくれるだろうか。 涙を流し、小さく呟いた。 青い花びらが舞い、二人を祝福してくれてるように思えた。 ハイド・ブラッド24歳。 俺は孤独に戦う事を誓った。 そして全て終わったら愛する者の隣で永遠の眠りに堕ちよう。 それが俺にとっての幸せの形だった。 シオンの花言葉ー君を忘れないー 勿忘草の花言葉ー真実の愛ー
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